こんにちは、せんせーです!今回は「タワマンの本当のメリット、デメリット」というテーマでお届けします。
アッパー層の象徴とも言える高層のタワーマンション(以下、タワマン)。東京オリンピックの選手村跡地に建設されている「晴海フラッグ」は購入のための抽選倍率が平均で15倍を超えるなど、非常に高い人気を誇っています。また、武蔵小杉駅、川口駅、津田沼駅といった首都圏の主要駅にも次々とタワマンの建築が進んでおり、今後もますます盛り上がりが予想されています。
ただ、タワマンには「便利そう」「お金持ちが住んでいそう」「修繕が大変そう」というイメージはあるものの、実際にどんなメリット、デメリットがあるのかを実感把握している方は少ないと思います。今回はそんなタワマンのメリットデメリットを、具体的な数字を交えながらお伝えします!
タワマンのメリット
生活環境が優れている
タワマンのメリット1点目は、生活環境の良さです。
タワマン購入者へのアンケートを見ても、セキュリティや眺望、周辺設備といった項目を挙げている方が多いです。例えばROOVを提供する株式会社スタイルポートが2022年11月に実施した「地方タワマン購入者に関する実態調査」では、タワマンを購入した方の60.4%が「より生活に便利なマンションが良いと思った」から購入したと回答しています。実際の満足度も自己居住用の場合は実に95.6%の方が「非常に満足」「やや満足」と回答しており、その理由のトップとして67.4%の方が「周辺環境の良さ」を理由に挙げています。想像通りの環境で想像通りの便利な暮らしができている方も多いのではないでしょうか。
生活利便性についてはその立地以外でも、「セキュリティ対策が充実していること」「高層階であれば虫が出ないこと」「コンシェルジュによるサービスがあること」など、総合的に見て満足しているという意見が多く出ていました。
資産価値の大幅な変動が見込める(ハイリスク・ハイリターン)
続いてのメリットは資産価値の大幅な変動が見込めることです。これはリスクとも言えますが、タイミングや立地が上手く当てはまればメリットになると言えます。
例えば中古マンション購入アプリ「カウル」を運営するHousmartが発表した2022 HYPERLINK 年湾岸タワマン値上がり率ランキングによると、勝どきの「ソフィアタワー勝どき」、有明の「シティタワー有明」、晴海の「ベイサイドタワー晴海」、東雲の「ビーコンタワーレジデンス」といったタワーマンションは、2021年12月から2022年12月にかけての1年間で20%超の値上がりを記録しています。コロナバブルや円安の影響でそもそも市況として値上がり傾向にあったことも事実ですが、新築時が一番高い金額となることも多い不動産市場において、1年間で20%の値上がりとなる物件は決して多くありません。日銀による金融政策の変更や、円安の進行により海外マネーの流入など、引き続き先行きの不透明な市況が予想されます。その分不動産価格も変動することが予想されるため、購入する物件次第では大幅なリターンも見込める可能性があります。
節税対策になる ※2024年1月に税制改正あり
タワマンのメリット3点目は、節税対策になる場合もあるということです。
ただし、2024年度の税制改革によって、いわゆる「タワマン節税」は大幅に制限される予定となっています。
それでも現金やその他の金融資産と比較した際に一定の節税効果は見込まれています。
そもそもタワマン節税とは、タワマンの「市場価格(実際に売買取引される価格)」と「相続税評価額」の乖離を利用して相続税の圧縮を図ろうという手法です。
現行の相続税評価額の計算方法は、「建物評価額+土地の評価額」という計算式で計算されます。建物の評価はその構造や築年数などから算出される固定資産税評価額を基準にし、土地の評価は「物件全体の土地面積×共有持分×路線価」という計算が基準となります。
この計算式の場合、物件の相続税評価額において「階数」という、タワマンにおいて価格を決める大きな要因が反映されていません。ただでさえ都心の物件は市場価値の急激な上昇から、特にここ最近で評価額と市場価格の乖離が大きくなっていました。
ここに「高層階のタワマン」という要素が加わると、評価額が市場価格の2-30%程度になることも珍しくありません。
このようなタワマンの購入による相続税の圧縮が、富裕層の間で話題になっていました。
流石に国税庁もこれを無視できなくなり、2024年の1月からは「相続税の評価額を市場価格の6割以上に引き上げる」という算定ルールが適用されることになりました。タワマンだけでなく全ての物件が対象となりますが、特にタワマンの保有者にとってはインパクトが大きい改正です。もちろん改正後も現金と比較すると評価額は圧縮されますし、一定の節税効果は見込めますが、「購入時点に想定していたほど節税対策ができない」という事態も見込めますので、注意が必要です。
タワマンのデメリット
大規模修繕の実施事例が少なく、修繕計画が難しい
続いてはタワマンのデメリットを見ていきましょう。1点目は大規模修繕の実施事例が少ないため、修繕計画を立てるのが難しいという点です。タワマンの建設は2000年台に入ってからラッシュを迎えましたが、ちょうど20年ほどが経った今、徐々に大規模修繕の時期を迎えることとなります。
例えば、日本で初めての55階建てのタワマンである、1998年築のエルザタワー55(埼玉県川口市)を見てみます。高さ185メートルで総戸数650戸にも及ぶエルザタワーは、2015年から2017年にかけて大規模修繕を実施しました。その工事費総額は実に「約12億円」に及びます。最も、単純計算で戸あたりの修繕費は185万円、月にならすと1万円前後とそこまで大きな金額にはなっていません。
ただ、この金額で収まったことにはいくつも理由があります。例えば事前に管理組合が慎重な修繕会社選定を行なっていたことや、大規模修繕で一番の高額工事とも言える「エレベーター修繕」を行なっていないことなどです。特に高層マンションの場合は工事を実施する箇所が多いことに加え、マンションごとに共有部の作りや設備が通常のマンションより大きく異なります。そのため修繕会社によって大きく見積もりが変わることも予想されますので、管理組合をしっかりと機能させて修繕計画を立てることが非常に重要なのです。
入居者の属性がバラバラで管理組合が機能しづらい
タママン2つ目のデメリットは、住民の質がバラバラということです。①では管理組合の役割が大事であることを述べましたが、タワマンはその性質上、なかなか管理組合が機能しにくいというのが大きなデメリットです。例えば高倍率の抽選倍率で話題になった「晴海フラッグ」ですが、購入者は必ずしも自分たちが住むという目的ではないことが予想されます。例えば国内外の投資家や地方の富裕層による転売や賃貸目的、高齢者の節税対策としての可能性も考えられます。
実際、勝どき駅最寄りで築16年の「THE TOKYO TOWERS MIDTOWER」は、2023年10月15日時点でSUUMOに49部屋の賃貸募集が出ていました。こういった居室については、オーナー自身が住んでいる訳ではありませんから、当然物件管理に対しての意識も手薄になりがちです。
また、タワマンは上層階と下層階で金額が大きく異なるほか、間取りのタイプも単身間取りからファミリー間取りまで幅広く作られていることが多いです。
これはつまり、それだけ多様な収入帯の方が1つのマンションに住んでいることとなります。当然修繕費や修繕計画についての合意をとることも難しくなるので、その結果として修繕計画が遅れることにもなり得るのです。
そのため近頃は、管理組合の運営をマンションの住民以外に任せる「第三者管理方式」の導入も進んでいます。管理費用が別途発生するといったデメリットがありますが、物件管理が適切に行われないというリスクと天秤にかけた時、プロに任せた方が良いという動きがあるのです。このように入居者の属性や管理組合の機能度合いというのは、タワマンを見る上でチェックしておくべきポイントです。
積立修繕費の不足が予想されている
タワマンのデメリット3つ目は、積立修繕費の不足が予測されているという点です。①や②で述べてきた内容と重なる部分も多いですが、改めて修繕費の不足が予想される理由を2つの点からお伝えします。まず1点目は、そもそもの建築業界の人手不足や資材の高騰です。
特に近年はウッドショックやロシアとウクライナの戦争、大幅な円安などを経て資材価格が大幅に高騰しています。例えば日本建設業連合会がまとめた資材高騰・労務費の上昇等の現状パンフレット月版によると、建設全体の資材価格は2021 年1月から2023年8月のわずか2年半で、平均27%の価格上昇と見積もられています。ここに人手不足による人件費上昇が加わることになります。特にタワマンの場合は工事が長期化する場合が多いため、その分人件費の上昇は工事全体の金額に大きなインパクトを及ぼします。
そして2点目はタワマン独特の設備についてです。前述したエレベーターについても、普通のエレベーターとは違い、「高層階までスピーディにいける高速エレベーター」や「建築基準法によって定められている非常用エレベーター」など、タワマンだからこそ整えなくてはいけない設備が多くあります。例えばジムや温水プールなど、共有部の豪華さに惹かれて購入したは良いものの、それによって積立修繕費や管理費の値上がりに苦しめられるという可能性も多分に含んでいるのです。
まとめ
さて、ここまでタワマンのメリットとデメリットについて見てきました。タワマンにはイメージ通りのメリットもあれば、普通のマンション以上に気をつけておくべきポイントも多くあります。特に資産価値の変動や大規模修繕によるインパクトが大きいタワマンを検討する場合は、どんな暮らしを求めているのか、どのくらいの期間保有するつもりなのかなど慎重に検討する必要があるでしょう。
今回もお読みいただきありがとうございました。
髙屋 亮
1級ファイナンシャル・プランニング技能士 、CFP®、宅地建物取引士、証券外務員Ⅱ種、整理収納アドバイザー2級、住宅ローンアドバイザー
人生3大資金と言われる「教育・住宅・老後」に関わる実務経験を基盤に、1級FP技能士・CFP®認定を併せ持つ。無形商材で鍛えた表現力でひも解く金融セミナーは、その分かりやすさに高い定評があり、学校現場への金融出張授業も手掛ける。
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