賃貸管理会社を変更する時期と管理トラブルの回避方法を不動産管理の専門家が解説

日頃から賃貸管理会社の業務に不満がある場合には、管理会社を変更することが可能です。

この記事では、賃貸管理会社の変更を検討すべきタイミングや、起こりやすいトラブルと回避策、管理会社の変更を行う手順について、賃貸業界歴約14年、不動産業界歴約20年で元賃貸仲介・管理会社勤務の筆者がわかりやすく解説します。

目次

賃貸管理会社の変更は可能か?

管理会社の変更は可能ですが、行う前に管理委託契約書の記載を確認しておくべき箇所があります。
確認漏れがない様にしっかりと確認をしましょう。

解約の予告期間

管理委託契約書にある「解約の予告期間」の条文を確認しましょう。
解約予告期間は、一般的には「3カ月前」となっているケースが多いですが、まれに6カ月前や契約満了日のみ解約が可能などとなっていることもあるので注意が必要です。

違約金の有無

つぎに、管理委託契約書の「違約金」の部分を確認しましょう。管理解約を抑止するために、解約時に違約金を設定している会社も存在します。
違約金記載の有無を確認し、記載があれば支払う義務が生じます。

管理手数料と管理内容

現在の管理会社が行っている管理手数料が何%であるのか、集金管理もしくはサブリースなのか、管理業務の内容などについて確認をしておきましょう。
管理業務内容は会社ごとに異なりますので、箇条書きにしてまとめておくと後で比較がしやすくなります。

賃貸管理会社変更を検討するタイミング

この章では、管理会社の変更を検討したほうが良いタイミングについて解説をします。

管理手数料や修繕費用が高いと感じる時

管理会社の管理手数料は、集金管理型で5%程度、サブリース契約では10%程度が一般的です。

それよりも高いと感じる場合には他の管理会社と比較をしましょう。

ただし、管理手数料が高くても滞納保証がついている、安くても日常・定期清掃や設備点検などがオプション契約となっているなど、管理メニューは管理会社ごとに異なります。

他社と比較をする場合には、金額だけでなくサービス内容も含めて検討していく必要があります。

また、設備・建物に関する修繕費用についても、値段のみにとらわれず、顧客対応、アフターフォロー、施工管理料なども考慮しながら比較することが大切です。

空室が続いているのに改善提案がない時

集客力がない、または、入居率に対しての意識が低い管理会社は、不動産投資にとって致命的です。

入居者の集客ができず、空室が3カ月以上続いているのに一度も募集状況の報告や空室対策の提案をしてくれない管理会社は、変更を検討しましょう。

管理会社や担当者に問題があり、管理状況に不満がある時

健全な賃貸経営には、賃貸管理会社や担当者との連携が不可欠です。

担当者からの報告・連絡・相談がない、物件の管理状況が悪い、入居者からのクレームがいつまでも解決されない、滞納者が増えているなど、不満が増えてきている場合には管理会社の変更を検討する良い機会であると言えます。

契約書に書かれている業務内容を再度読み、どの項目が上手く処理されていないのかを具体的に確認しておくと、曖昧に感じていた解約理由が明確になります。

オーナーチェンジの時に管理会社を変更したい時

中古物件で物件を購入した場合、以前のオーナーが依頼していた管理会社を引き継ぐ場合があります。

良好な管理状況の場合にはそのままでも問題はありませんが、いい加減な管理会社の場合にはオーナーチェンジのタイミングで管理会社も切り替えるほうが得策と言えます。

物件を購入する前に物件へ行って現在の管理状況を確認し、自分が求めているサービスを行える管理会社であるかを見極めておきましょう。

管理会社変更時に起こりやすいトラブル

この章では、賃貸管理会社を変更する時に起こりやすい8つのトラブルについて解説をします。

解約業務に関するトラブル

①鍵や契約書類を一部紛失している
管理会社は通常、もしもの時のために管理用のマスターキーを預かっていますが、鍵を数本紛失している、契約書の一部を紛失してしまっていることがあります。

②管理解約日までの管理対応がいい加減になる
管理解約が決まるとこれまでの管理会社のモチベーションが下がってしまうため、管理対応がいい加減になってしまうことがあります。

引き継ぎ業務に関するトラブル

①入居者からのクレームやトラブルの引継ぎが不十分
長期化している、または解決していない状態での入居者からのクレームやトラブルに対しての引継ぎが十分にされないことがしばしばあります。

②修繕事項に関する詳細な引継ぎがない
近年行った大規模修繕工事の内容や、退室工事、修繕工事に関しての引継ぎはされないケースが多く、オーナーが所有している請求書などの書類のみで判断せざるを得ないケースが多いため、注意が必要です。

③契約者毎の原状回復や敷金に関する引継ぎ内容に誤りがある
契約者ごとに行う敷金移管の誤りや、原状回復に関する条文に記載されている特約部分の引継ぎが曖昧な場合が見受けられます。

変更手続き業務に関するトラブル

①入居者が誤って家賃を旧管理会社へ振り込んでしまう
変更時は入居者に対して家賃振込先変更の通知を出しますが、1、2カ月程度は誤って旧管理会社へ振り込まれてしまうことがあります。

中には誤って振り込まれた金額をなかなか返金してくれない意地悪な会社も存在しますので、注意しましょう。

②家賃保証会社との保証契約が終了してしまうことがある
これまでの管理会社と提携をしていた家賃保証会社が、新しい管理会社と提携をしていない場合には、引継ぎは行われずに契約終了となってしまうことがあります。

その場合には、入居者に新しい管理会社が提携している保証会社と契約をしてもらう必要があります。

③入居者が加入する火災保険を変更する必要がある
通常、火災保険は入居者と契約を行った管理会社が代理店となっていますので、更新などのタイミングで入居者が加入している火災保険を新たな管理会社が提携している保険に切り替えてもらう必要があります。

賃貸管理会社の変更時に発生するトラブルへの回避策

この章では、発生する恐れのあるトラブルに対しての回避策について解説をします。

管理の引継ぎについて、オーナー自身も確認や立会いを行う

新たな管理会社への業務引継ぎを行う際には、できるだけオーナー自身も立会うようにし、漏れがないか確認をしましょう。

立合うことが難しい場合には、引継ぎ内容を事前に書面でもらうようにして事前に確認をできるような形にしておくことが必要です。

入居者への管理変更通知は丁寧に行い、記載内容はオーナー自身も確認をする

管理変更は入居者から不満や不安な声が出てくる場合もあります。

新管理会社が作成する入居者への変更通知には、新管理会社のメリットも記載しておくなど丁寧に作成してもらい、オーナー自身も事前に文面を確認しておきましょう。

賃貸不動産業界の繁忙期のおいての管理変更は避ける

賃貸業界の繁忙期は1月〜3月ですので、この時期の管理変更は避けるようにしましょう。
また、9月〜10月も忙しい時期ですので、避けたほうが無難です。

4月や11月頃に解約通告を行い、7〜8月、あるいは11〜12月頃から新管理会社で管理開始にするなど、余裕を持ったスケジュールで変更をすると安心です。

融資を受けている銀行にも管理会社変更の旨を事前に伝えておく

必須というわけではありませんが、現在融資を受けている銀行にも管理会社の変更について事前に報告をしておくと好印象です。

賃貸管理会社変更手続きの流れ

この章では、賃貸管理会社変更手続きの流れについて解説をします。

①管理会社を変更したい理由を明確にし、書き出してみる
管理会社の変更をする理由は、現在の会社に対する不満の解消にあります。
不満だと感じている理由を書き出してみましょう。

②現在の管理会社と交わしている管理委託契約書の内容を確認する
現在依頼をしている管理会社と交わしている管理委託契約書にある業務の内容や管理メニュー、金額などを再度確認しましょう。

③新たな賃貸管理会社を複数探し、費用や内容を比較する
複数の管理会社をピックアップして面談を行い、費用や業務内容、管理会社や担当者との相性などを比較します。

④新たな賃貸管理会社と管理委託契約を締結する
自身が選んだ新たな賃貸管理会社と管理委託契約を締結します。

⑤現在の賃貸管理会社へ管理委託契約の解約を通知する
解約通告期限を守り、現在の管理会社に対して解約を通告します。トラブルを避けるためにも、必ず書面でも解約通告を行っておきましょう。

⑥家賃保証会社へ管理会社変更の連絡をする
旧家賃保証会社と新家賃保証会社へ管理会社変更の連絡をします。
いずれも管理会社が代行して行う場合があります。

⑦新旧の賃貸管理会社間で管理に関する業務引き継ぎを行う
管理業務を引き継ぐ場にはできるだけオーナー自身も出向いて情報を共有し、質問などがあれば忘れずに聞いておくことが重要です。

⑧入居者へ管理会社の変更を通知する
入居者に管理会社の変更と家賃振込先口座の変更についての通知を書面で行います。
できるだけ新管理会社には訪問をして書面を渡してもらい、トラブルを抑制しましょう。

まとめ

この記事では、管理会社の変更を検討すべきタイミングや、起こりやすいトラブルと回避策、管理会社を変更する手順について解説をしました。

賃貸管理会社の変更は収支を改善させ、健全な賃貸経営へと導く手段の一つですので、トラブルなどを考慮しながら慎重に検討しましょう。

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この記事を書いた人

■ペンネーム
小泉寿洋(こいずみとしひろ)
■不動産歴
約18年
■保有資格
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャルプランニング技能士、AFP、ホームステージャー1級(LIFE)、終活カウンセラー1級、終活ガイド1級、遺品整理士、相続診断士、福祉住環境コーディネーター2級他
■得意なジャンル
賃貸不動産の仲介・管理、不動産投資、賃貸不動産経営
■簡単な自己紹介
上場グループに所属する不動産賃貸管理会社で賃貸仲介店舗、賃貸管理部門に所属し、社員から部門の管理職まで14年半ほど従事。その後、不動産仲介・リノベーション工事・生前整理・終活サポートの会社を仲間と立ち上げ、現在はフリーランスにて賃貸経営・賃貸管理・終活に関してのアドバイスやコンサルティング、終活セミナー講師、不動産系やFP系のライターなど各方面で活動中。

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