不動産投資を始めるにあたって、「サブリース契約」という言葉を聞いたことがあると思います。
管理会社が一括借上げを行うため、賃貸経営の初心者でも始めやすい方法ですが、メリットだけでなくデメリットもあります。
この記事では、サブリース契約におけるメリットやデメリット、契約をする際に注意すべき点について、元賃貸管理会社勤務歴約14年、不動産業界歴約20年以上の筆者がプロの目線で解説します。
サブリース契約と管理委託方式の違い
この章では、サブリース契約と管理委託方式との違いについて解説をします。
管理委託方式とは、不動産管理会社が賃貸不動産のオーナーと委託契約を結び、建物管理や入居者管理などの管理業務のみを行う契約のことを言います。
また、管理手数料については、委託する管理業務の内容や会社によって異なりますが、満室時賃料の5%程度が一般的です。
サブリース契約とは、不動産管理会社が賃貸オーナーからアパート・マンションを一棟丸ごと借り上げ、入居者へ転貸するという契約のことを言います。
このサブリース契約を用いて賃貸不動産の管理を行う不動産管理会社のことをサブリース会社と言います。
サブリース契約は一般的に10~20%程度の管理手数料がかかりますが、空室であってもオーナーは管理手数料を引いた後の借上げ賃料(サブリース賃料)を毎月受け取ることができるところが最大のメリットです。
サブリース契約のメリット
この章では、サブリース契約を行う場合には具体的にどの様なメリットがあるのかをわかりやすく解説します。
空室や滞納があっても家賃収入を得られる
空室リスクや家賃滞納リスクを気にせず、毎月一定金額の安定した家賃収入を確保することができます。
賃貸管理業務全てを不動産管理会社に任せられる
全ての管理業務をプロの管理会社に任せるため、建物管理や入居者トラブル対応などにかかる手間や時間を省くことができます。
確定申告にかかる時間を節約できる
通常の管理形態では1室ごとに税務計算を行う必要がありますが、サブリース契約の場合は、借主であるサブリース会社との契約分のみの計算であるため、確定申告時の税務計算が簡素化できます。
金融機関からの融資が受けやすい
毎月安定した賃料が見込まれるため、金融機関からの融資が受けやすくなります。
相続税対策になる
相続税では、賃貸物件として貸している不動産の評価額は通常より低く評価されます。
サブリース契約では1棟全室を貸しているため、実際には空室であろうとなかろうと満室という扱いになり、賃貸による減額評価を適用することができるため、相続税対策となります。
サブリース契約のデメリット
サブリース契約には、メリットだけでなくデメリットもあります。メリットのみで安易に選択をするのではなく、デメリットを受け入れることができるのかを十分に検討しましょう。
借上げ賃料の見直しや減額交渉がある
たとえば、「30年一括借上げ」となっている契約であったとしても、「2年毎に借上げ賃料保証額の見直しが必要」などと定められているケースが多く、見直しを行うごとに賃料の減額交渉をされることがあります。
管理委託方式より収益性が低い
サブリース会社は入居者から得られる賃料から高い料率の管理手数料を差し引くため、通常の管理委託方式の物件と比較して収益性は低くなってしまいます。
また、契約時や更新時に入居者が支払う礼金、更新料は、一般的にはサブリース会社が受け取ることが多いため、管理委託方式と比較してオーナーの収益は少なくなります。
免責期間がある
新築物件の新規稼働時や退去するたびなど、一定の期間を免責期間として設定されることがあります。
免責期間中はオーナーに対する賃料支払いが免除され、その間に借主から得られる賃料はサブリース会社の収益となります。
入居者を選べない
通常の管理委託方式では、入居者希望者の最終決定権はオーナーにありますが、サブリースの場合には、入居者の決定権はサブリース会社にあります。
オーナーは入居者を選ぶことができないため、好ましくないタイプの入居者が入居する可能性もあります。
オーナー側からの中途解約が難しい
オーナーは物件を貸している立場であるのに対し、サブリース会社は借主という立場であるため、借地借家法によって保護されます。
オーナー側からの中途解約には正当な理由が必要なためとても難しく、場合によっては違約金などを請求される場合もあります。
サブリース契約での注意点
この章では、サブリース契約をする際に注意しておくべきポイントについて解説をします。
保証賃料の保証料率
サブリース契約では、入居者から得る家賃収入の80~90%の保証料率が一般的です。
保証料率はサブリース会社によって基準が異なります。
物件周辺の賃料相場やエリア特性、不動産管理会社の入居率なども考慮しながら、サブリースが本当に必要かどうかも含めて慎重に検討する必要があります。
契約期間や家賃の見直し期間
契約期間は、長期契約であっても短いスパンで賃料を見直しするパターンと、短い契約期間で都度契約のたびに賃料を見直しするパターンに分かれます。
契約期間、賃料の見直しを行う周期、何年間は同じ額の賃料でいられるのか、賃料の値下げはどのくらいになるのか、最近の見直しを実施した傾向などを事前にヒアリングして検討しましょう。
契約解除をするための条件
サブリース契約は、物件の借主であるサブリース会社が借地借家法で保護されるため、サブリース契約を解除するための条件について、細かく条文を確認しておく必要があります。
契約を解除できる条件、契約解除できない期間の有無、解約予告は何カ月前までに行わなければいけないのかなど、該当する箇所の契約書条文もしっかりと確認をしておきましょう。
免責期間がある
サブリース契約の場合、免責期間中は入居者から賃料収入があったとしてもサブリース会社の収益となり、オーナーが賃料収入を受け取ることはできません。
免責期間は、新築時やサブリース契約新規稼働時、入居者の退去後などに設定されます。
免責期間は何カ月なのか、免責期間が適正な長さであるかなど、免責期間によって得ることができない賃料額を計算しながら検討してみましょう。
広告費や原状回復費用の負担
入居者が決まった際に仲介会社へ支払う広告費や、退室者が出た際の原状回復費、リフォーム費用などはサブリース会社が負担する場合もありますし、オーナーが負担する場合もあります。
これらにかかる費用はまとまった金額であることが多いため、費用負担はどちらがするのか、オーナーが負担する場合の支払い方法、費用負担の内容などを細かくヒアリングしておく必要があります。
また、室内に関する費用負担は管理会社であっても共用部分の設備修理費用はオーナー負担である場合がほとんどであるため、念のため確認をしておくと良いです。
サブリース会社が信頼できる会社か
なかでもとても重要なのが、信頼のおける会社かどうかという点です。
サブリース会社の経営状況が不安定だと倒産をしてしまうケースもありますし、物件周辺のエリアに精通していない会社の場合には、そのまま入居率に影響してしまい、賃料見直し時の借上げ賃料減額に繋がります。
サブリース会社から提出された提案資料と近隣相場を比較してみる、賃料に関するシミュレーションの内容がかけ離れたものでないかなどを調査してみる、などの細かな見極めが必要です。
また、ホームページにある口コミを細かく調べる、近隣の不動産会社へヒアリングをするなど、様々な角度から調査をすることが大切です。
まとめ
この記事では、サブリース契約についてのメリットやデメリット、契約をする際に注意すべきポイントなどについて解説をしました。
サブリース契約は、収益性としては低いですがリスクも避けることができるため賃貸経営の初心者でも始めやすい契約方式です。
メリットだけでなくデメリットもしっかりと把握して、慎重に検討してみることをお勧めします。
イエジャーナルでは不動産の売却や購入のご相談を承ります。