10年ほど前までは、部屋を借りる際には連帯保証人が必須でしたが、民法改正や社会情勢が変化していく中で、ここ数年では家賃保証会社の利用を必須とすることが一般的となっています。
この記事では、今後ますます欠かせない存在となってくる家賃保証会社、仕組みやメリット・デメリット、選ぶ際のポイントなどについて賃貸業界歴約14年、不動産業界歴約20年以上の筆者がわかりやすく解説します。
家賃保証会社の仕組みと保証内容
家賃保証会社とは?
家賃保証会社とは、入居者からの家賃に滞納が生じた場合であっても、大家さんへ家賃支払いを保証する会社のことをいいます。
従来は連帯保証人をつけることが主流でしたが、ここ数年で入居審査時に家賃保証会社の利用を必須とすることが一般的となっています。
これまでは連帯保証人が全ての責任を負っていましたが、2020年4月に民法が改正され、大家さんと連帯保証人の間で極度額(連帯保証人が負担する債務の限度額)を賃貸借契約時に決めることが義務化されました。
極度額が多すぎると連帯保証人になる人が見つかりにくくなるため、家賃保証会社を利用する人が増加しているという状況です。
家賃保証会社の仕組み
家賃保証会社の種類には、「代位弁済型」と、「収納代行型」があります。
・代位弁済型
通常時の家賃の支払いは大家さん(もしくは管理会社)と入居者の間で行われ、
家賃滞納が発生した時のみ、大家さんへ家賃の立て替えを行います。
期日までの入金がなく滞納が発生した場合には、大家さんから家賃保証会社へ滞納の報告(代位弁済請求)をし、後日、家賃保証会社より大家さんの口座へ滞納分の賃料等が振り込まれます。
・収納代行型
入居者の滞納の有無に関わらず、家賃保証会社が大家さんへ家賃の立替払いを行います。
毎月、入居者は家賃保証会社へ家賃を支払うため、入居者と大家さんとの間での家賃のやり取りはありません。
大家さんは、手間のかからない「収納代行型」を選択されているケースが多いです。
家賃保証会社との保証委託契約は、代位弁済型の場合、家賃保証会社と入居者との間で締結され、収納代行型の場合は大家さん(もしくは管理会社)・入居者・家賃保証会社の3者で契約をします。
保証委託料の金額については家賃保証会社によってそれぞれ異なりますが、初年度で家賃の0.5~1か月分、2年目以降は年1〜2万円の保証委託料が一般的です。
家賃の金額に応じた保証委託料を入居者が賃貸借契約時に支払います。
家賃保証会社は滞納した家賃を大家さんに支払った後、滞納している入居者に対して滞納家賃の督促・回収業務を行います。
入居者は、滞納した家賃を家賃保証会社から請求されて支払うことになります。
家賃保証会社の保証内容
家賃保証会社の主な保証内容は以下の通りとなります。
①収納代行型の場合:家賃収納代行の管理・滞納者への支払い督促
代位弁済型の場合:滞納した家賃の代位弁済(立替え払い))
②審査時に申込者の内容で過去に滞納や破産等がなどないか与信審査を行う
③部屋の明け渡し訴訟にかかる裁判手続きの費用、弁護士への報酬など
④入居者が自殺や孤独死などで死亡した際の原状回復費用、特殊清掃費用など
⑤荷物を残したままいなくなった人、死亡者などが残した残置物の撤去費用の保証
保証内容は、家賃保証会社や加入する家賃保証サービスによって内容が異なります。
家賃保証会社を検討する場合には保証内容を細かく確認しながら選定するとよいでしょう。
家賃保証会社利用時のメリット
家賃保証会社を利用する場合のメリットは、主に以下の6つが挙げられます。
尚、一般的な家賃保証会社を想定していますので、会社によってはプランに入っていない場合もあります。
①家賃滞納の心配が減る
毎月確実に家賃を回収でき、滞納家賃の催促や回収の代行をしてくれるため、家賃滞納に対する心配が不要となります。
②裁判費用を負担してもらえる
滞納した部屋の明け渡しにかかる裁判費用を家賃保証会社が負担をしてくれます。
③入居者募集の間口が広がる
アルバイトなど収入が安定しない人でも入居審査に通りやすくなるため、入居者への間口を広げることができて空室リスクの抑制に繋がります。
④滞納者への安否確認が出来る
家賃滞納時に入居者への連絡などを対応してくれるため、安否確認をすることができます。
⑤与信審査をしてくれる
家賃保証会社の審査時に与信審査などの入居者審査を代行してくれるため、入居審査時のリスクをある程度軽減することができます。
⑥初期費用を抑えた条件で入居者募集が可能
家賃保証会社を利用することによって、家賃滞納リスクを補う意味で預かる敷金を減らし、初期費用を減らして募集をする事も可能になります。
家賃保証会社利用時のデメリット
家賃保証会社を利用する場合のデメリットは、主に以下の3つが挙げられます。
①入居者に費用負担がかかる
入居者に保証料や更新料などの費用負担がかかることで、成約しづらくなる可能性があります。
②家賃保証会社が倒産する可能性がある
家賃保証会社が経営不振となって倒産した場合、損害を被るのは貸主である大家さんや管理会社側となり、契約上、入居者には「連帯保証人がいない状態」となってしまいます。
③家賃滞納時に家賃回収の対応が厳しい会社もあり、近所に悪評が立つ場合がある
家賃保証会社を利用する際には、インターネットの口コミサイトなどで、会社や社員の評判、家賃回収に関する対応などが適切か調べておきましょう。
また、賃貸保証業の業界団体に加盟している業者を選ぶことも有効な手段です。
家賃保証会社を選ぶ際に確認をすべきポイント
この章では、家賃保証会社を選ぶ際に確認をすべきポイントについて解説をします。自主管理をする場合には、大家さん自身で手続きを行う必要があるため、内容を把握しておきましょう。
①保証内容を細かく確認する
・保証期間
・契約形態(代位弁済なのか、収納代行なのか)
・保証範囲
・代位弁済日
・免責期間
・入居者が支払う初回保証料、更新料
・滞納が発生してからの報告(代位弁済請求)の期限
・家賃立替までの日数に柔軟性があるか
・家賃保証の限度額
②家賃保証会社の状態を面談によるヒアリングやネットなどで調べる
・コンプライアンスを遵守できる会社か
・会社の資本金や サービス開始からの年数はどうか
・家賃保証会社の社会的信頼度はあるか
③与信審査についてヒアリング
与信審査の速さや正確さ、審査通過率など
家賃保証会社を利用する際の注意点
家賃保証会社には「収納代行型」と「代位弁済型」がありますが、滞納が発生し、代位弁済請求を行う際には注意が必要です。
収納代行型は家賃の回収を家賃保証会社に依頼する方法となっていますが、代位弁済型は、大家さんが家賃の滞納を確認した後に、家賃保証会社に対して代位弁済請求をする方法となっています。
管理会社に管理を委託している場合であれば、家賃の入金確認から代位弁済請求までの手続きは管理会社が通常業務として対応してくれますが、自主管理をしている大家さんの場合は、自身で毎月家賃の振込入金を確認し、滞納が発生していた場合には家賃保証会社へ速やかに代位弁済請求を行わなければなりません。
代位弁済型では「免責期間」が設けられており、免責期間を過ぎてしまうと代位弁済請求をすることができなくなってしまいますので注意が必要です。
免責期間の日数は家賃保証会社によって異なります。
代位弁済型を選択する場合には、代位弁済請求方法の確認や免責期間についても忘れずに確認をしておきましょう。
まとめ
この記事では、家賃保証会社のしくみやメリットやデメリット、選ぶ際のポイントなどについて解説をしました。
今後はますます欠かせない存在となってくる家賃保証会社を上手に活用して、安定した賃貸経営を行いましょう。
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