アパート経営に必要なメンテナンスのポイントを賃貸管理の専門家が詳しく解説

賃貸アパートの経営では、日頃のメンテナンスが重要です。お金がないからと言って疎かにしていると、賃貸経営はたちまち悪化してしまいます。

この記事では、アパート経営を行う際に日頃からメンテナンスをしていく重要性、メンテナンスの種類、メンテナンスが必要なタイミングについて、賃貸業界歴約14年、不動産業界歴約20年で元賃貸仲介・管理会社勤務の筆者がわかりやすく解説します。

目次

アパートのメンテナンスをしなかった場合

アパートのメンテナンスをしていないと、以下の状況になってしまいます。
デメリットはあってもメリットはないので、高額な費用がかかっても必ず実施する様にしましょう。

入居率が低下し賃貸経営が悪化する

建物の美観が損なわれ、入居者や部屋探し時の印象が悪くなります。ゴミ置き場が汚く放置物が多いままにしている建物は、入居者の質が更に悪くなってしまう。
日頃の不満から、普通の感覚を持った優良な入居者は次第に退去をしてしまい、入居率が下がって賃貸経営が悪化するという流れになります。

入居者が安全・快適に暮らすことができない

建物の破損をそのままにしておくと、いずれ人命にかかわる重大な事故につながることもあります。
建物の劣化による雨漏れやシロアリの発生などが進行してしまうと、入居者は生活に支障をきたして安全で快適な暮らしをすることができず、不安で不満が多い毎日を送ることになります。

結果的に通常より多くの費用や手間がかかってしまう

故障や破損が発生してから行う緊急の修繕は通常時よりも費用が高額になり、入居者への対応の手間や時間も多くかかってしまうため、計画的に修繕をしていった方が費用負担を抑えることができます。

アパート経営で必要なメンテナンスとは

この章では、アパート経営において必要となるメンテナンスの種類について解説をします。

共有スペースの日常清掃・維持管理

共有部分の管理状態が悪いと退去者が増え、新たな入居者もなかなか決まりません。日常清掃や点検などで、建物まわりやエントランス、階段、廊下など共用部分の清掃や放置物の確認、ゴミ分別の管理、共用灯の交換、放置自転車の確認などを行っていく必要があります。

大規模修繕

大規模修繕とは、日頃実施することができない、建物の劣化部分や破損している部分を中心に大規模な修繕を行う工事のことをいいます。
多額の工事費用がかかりますが、メンテナンスを怠ると建物の劣化が早まってしまいます。大規模修繕工事には、外壁塗装やタイルの補修工事、屋根や屋上の防水工事、階段や手すりの工事、給排水管の更新工事などがあります。

設備修繕

設備修繕とは、居室内や共用部分の設備について、不具合や故障部分、破損している箇所を修繕または交換する工事のことをいいます。耐用年数や交換推奨時期などを調べておき、長期の資金計画を立てておくことが必要です。
居室内ではエアコン、給湯器、ガスコンロ、浴槽などの工事があり、共用部分では共用灯、オートロック設備、給排水設備の修繕・交換工事などがあります。

予防修繕

予防修繕とは、大きな修繕となってしまわない様に、不具合が発生しやすい箇所に対して行っておく修繕工事のことで、結果的に将来の修繕コストを抑えることができます。
シロアリの点検や駆除、耐震診断、外壁の劣化診断、排水管の高圧洗浄などがあります。

原状回復

原状回復とは、入居者が部屋を退去する際に行う修繕工事のことで、次の入居者へ貸し出すための準備をするメンテナンスです。通常の使用や経年劣化による損耗はオーナーの負担となり、入居者の故意・過失による破損や汚損は入居者の負担になります。
ハウスクリーニング、壁や天井のクロス、ふすまや障子、畳、カーペットフローリングなどの修繕・交換工事があります。

アパートの修繕工事が発生する一般的なタイミング

この章では、アパートにおける修繕工事が発生する一般的なタイミングについて解説をします。
国土交通省が出している「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」などを参考に確認をしてみましょう。

建物に関する工事

主に外壁工事、防水工事、階段手すり等の鉄部防錆工事に分かれます。

外壁工事
外壁の塗装やタイルの張替え補修を行う工事です。
10年から15年ごとが一般的な目安となります。

防水工事
屋上、屋根、ベランダなどの防水工事です。
劣化状況にもよりますが、10年から15年ごとが目安となります。

鉄部防錆工事
階段や手すりなど鉄部の防錆塗装工事です。
5年から10年ごとが目安となります。

建物の設備に関する工事

建物の設備トラブルは入居者の生活に直結するため、定期的な点検と、トラブル発生時には業者がすぐ対応できる体制作りが必要となります。

電気設備
オートロック設備、共用灯設備、インターホン設備などの修理・交換工事です。交換用部品の製造が終了するため、10年以上の経過が交換の目安になります。

ガス配管設備
20年頃の交換が目安ですが、安全性にも大きく影響が出るため、余裕を持った早めの修繕が必要です。

給排水設備
排水管洗浄は5年に一度は高圧洗浄を行う必要があります。
また、給水管・排水管の修繕・交換工事は15年から20年くらいの周期が目安となります。

室内の設備に関する工事

入居中の設備修繕工事は手間がかかるため、原状回復工事の際に劣化状況などをチェックしておきましょう。

給湯器
お湯の温度が上がらない、操作パネルが作動しないなどの症状が出てきます。5年から10年頃には修理、11年以上は交換が目安ですが、故障の頻度が増えてきたら一括交換工事が推奨されています。

エアコン
温度調節ができない、温風や冷風が十分に出ないなどの症状が出てきます。こちらも同様に、5年から10年頃には修理、11年以上は交換が目安ですが、故障の頻度が増えてきたら一括交換が推奨されていています。

キッチンガスコンロ
コンロが点火しなくなったなど、故障発生時のみの修理対応が一般的ですが、10年以上経つと部分交換なども必要となってきます。

ユニットバス・浴槽
10年から15年程度になると、浴室の壁や浴槽の破損などが増えてきますので、修理や部分的な交換が必要となってきます。

(出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」)

アパート経営を成功させるためのメンテナンス

この章では、日頃のメンテナンスを行っていく上でのポイントを3つ挙げて解説します。

修繕計画を立てる

管理会社、施工会社、メーカー等に費用やタイミングなどの相談をしながら長期修繕計画を立てましょう。計画を立てて数年経つと修繕を行うタイミングや価格はズレが生じてくるため、立てた計画は定期的に見直すことが重要です。

定期的に点検や修繕を行う

立てた計画が適正に実行されるよう、定期的に点検を行い、修繕や交換が必要な場合には早い段階で専門業者による作業を実施しましょう。修繕や交換を行った際には、次回に行う工事のために、作業の内容や費用、型番などの記録を残しておきましょう。防水工事などは自力でやろうとせず、プロに任せましょう。

修繕費用の積み立てをしておく

大規模修繕には多額の費用が必要です。金融機関からの融資という方法もありますが、融資が不可となる場合もあります。工事の実施が必要な時期になってから慌てることのないように、日頃から必要となってくる修繕費用の積み立てをしておくことが重要です。

まずは管理会社に相談を

この記事では、アパート経営を行う際に日頃からメンテナンスをしていく重要性、メンテナンスの種類、メンテナンスが必要なタイミングについて解説をしました。
メンテナンスの頻度や内容などは物件によって異なり、金額もさまざまですので、まずは日頃依頼をしている管理会社に相談をし、最適な長期メンテナンス計画を立てていく事が、アパート経営成功への近道となります。

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この記事を書いた人

■ペンネーム
小泉寿洋(こいずみとしひろ)
■不動産歴
約18年
■保有資格
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャルプランニング技能士、AFP、ホームステージャー1級(LIFE)、終活カウンセラー1級、終活ガイド1級、遺品整理士、相続診断士、福祉住環境コーディネーター2級他
■得意なジャンル
賃貸不動産の仲介・管理、不動産投資、賃貸不動産経営
■簡単な自己紹介
上場グループに所属する不動産賃貸管理会社で賃貸仲介店舗、賃貸管理部門に所属し、社員から部門の管理職まで14年半ほど従事。その後、不動産仲介・リノベーション工事・生前整理・終活サポートの会社を仲間と立ち上げ、現在はフリーランスにて賃貸経営・賃貸管理・終活に関してのアドバイスやコンサルティング、終活セミナー講師、不動産系やFP系のライターなど各方面で活動中。

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