賃貸経営では入居者のトラブルがつきものですが、長時間放置すると大きな問題となり、退室、キャッシュフローの悪化へと繋がってしまいます。
この記事では、賃貸経営でよくある入居者トラブルと対処法について、賃貸業界歴約14年、不動産業界歴約20年以上の筆者がわかりやすく解説します。
賃貸経営でよくある入居者トラブルの対処法
この章では賃貸経営でありがちな入居者トラブルと一般的な対処法を7つご紹介します。
設備の故障、不具合、劣化に関するトラブル
一番多いのが設備の故障や不具合に関するトラブルです。
具体例としては、
・エアコンが故障して作動しない
・給湯器が故障してお湯が出ない
などがあります。
【対処法】
室内に備え付けてある設備には、大家さんが修繕する義務があります。
管理会社へ委託をしている場合には管理会社へ連絡が入り、大家さんへの報告の後、修理対応をしてもらうことができます。
自主管理の場合には、大家さん自身が現地に赴いて状況確認や品番などを調べ、修理内容に応じた修理業者を手配する必要があります。
他の入居者からの苦情や入居者同士のトラブル
入居者同士の主なトラブルには、「騒音や生活音によるトラブル」、「ベランダやなどでの喫煙による煙やニオイ」、「汚れた部屋による悪臭やゴミ」などがありますが、なかでも特に多いのが騒音や生活音に関するトラブルです。
主な騒音や生活音に関するトラブル例としては、
・深夜に友人と騒ぐ
・大音量で音楽を聴く
・歩く音やドアを閉める音が響く
などがあります。
【対処法】
騒音の主は特定せずに掲示板やポストへの手紙の投函などを行い、入居者全員へ騒音が発生している旨をアナウンスします。
被害者である入居者や上下左右の入居者を中心に、音が発生する時間や騒音の種類、どの位置からなのかなどを詳しくヒアリング調査して事実確認を行います。
状況が改善されない場合には騒音元と思われる入居者へ連絡をし、状況の確認や注意などを行います。
この時、大きな問題へと発展してしまう可能性があるので、苦情元の入居者の名前を絶対に言わないように気を付けましょう。
水漏れによるトラブル
水漏れは、給水・排水設備の老朽化や設備不良、洗濯機の排水ホースがはずれるなどの入居者の過失があります。緊急性の高い内容が多いため、迅速な対応が求められます。
【対処法】
管理会社へ委託をしている場合には、入居者から管理会社へ連絡が入り、即時対応をしてもらうことができます。
自主管理の場合は、入居者から連絡が入ると大家さんは実際に現地へ赴き、応急処置や状況確認、修理内容に応じた修理業者を緊急で手配する必要があります。
入居者の過失であった場合には、後日入居者が加入している保険を利用した保険事故対応となる場合があります。
ゴミ出しマナーによるトラブル
ゴミの未分別、収集日・時間を守らずゴミ収集所がカラスや猫に荒らされてしまうケースがとても多く、近隣住民からのクレームが多く入ります。
衛生面だけでなく、放火などの危険性もあるため、常に注意をしながら管理をしていく必要があります。
【対処法】
入居時に渡す入居のしおりにゴミ出しのルールを詳しく記載して配布をし、掲示板にも集積場所や収集日時、分別方法等を写真や図を用いて見た目にもわかりやすく掲示をします。
また、フタ付きのゴミ分別コンテナなどを利用すればカラスや猫への対策になります。
大家さんが物件の近所に住んでいない場合には、日常清掃の回数や内容を変更する、不法投棄の抑止力となる防犯カメラを設置するなどの対策が有効ですので、管理会社に相談をしてみましょう。
ペット禁止の物件でペットを飼育するなどの規約違反
ペット禁止の物件で隠れて犬や猫を飼っているケースや、鳴き声等に対する近隣住民からの苦情によって発覚するケースが多いです。
【対処法】
まずは近隣住民に詳しくヒアリングを行い、該当する入居者にペットを飼っていることの事実確認をして規約違反であることを伝えます。
すぐに手放すことができれば良いですが、手放すことができない場合には退去をするよう交渉をします。管理会社にも相談をして連携をとりながら交渉を進めましょう。
入居者による家賃の滞納
家賃の滞納には「振込手続きを忘れた」、「お金がない」などがありますが、滞納が累積するとなかなか解消することができません。小まめに督促をして対応をする必要があります。
【対処法】
まだ申込の段階であれば、「審査をしっかりと行い優良な入居者を選ぶ」、「家賃保証会社を利用する」などの方法があります。
また、入居中の滞納では、「振込手続きを忘れた」の場合は口座振替にする、「お金がない」場合には、家賃の安い物件へ引っ越してもらう、市町村の窓口などへの相談を勧めるなどの方法があります。
まずは電話やメールでの確認、通知、督促状、訪問という流れで行い、連絡がつかない場合などは連帯保証人にも連絡をとり督促をします。
交渉をしても家賃の滞納が改善されず、3カ月分になってしまったら明け渡し訴訟という法的手続きに進みます。
退去後の原状回復に関するトラブル
退去後の原状回復に関しては、大家さんと借主の間で負担に関しての認識がずれてしまうことが多く、トラブルに発展するケースもあります。
【対処法】
2020年の債権法改正では、賃借人が負う原状回復義務について「通常損耗」や「経年変化」による部分に負担をする義務を負わないという条文が明記されました。
実際にどのようなケースが「通常損耗」や「経年変化」に該当しているのかは、国土交通省が設けた原状回復に関するガイドラインをよく読んで理解をしておくことが大切です。
入居者トラブルを放置するリスク
この章では、入居者トラブルを放置するとどの様なことになってしまうのかを、わかりやすく解説します。
空室が増え収益性が低下する
トラブルの原因となる入居者への対応を放置すると普通の入居者は退去していき、問題のある入居者のみが残ってしまいます。
入居が決まってもすぐにまた退去してしまうため、家賃を下げて募集せざるをえない状況になり、キャッシュフローは大きく悪化してしまいます。
問題の長期化は解決が難しくなる
家賃滞納の場合、そのままにしておくと滞納額が多くなりすぎて回収が困難になる可能性が高くなります。
また、入居者から外壁劣化による漏水被害に関する苦情を受けていたまま長い間放置していた場合などは、状況によっては入居者から被害に遭った箇所による損害の賠償請求を受けることもあります。
入居者全体のモラルが低下
ゴミの未分別を放置すると、やがては入居者全体のごみの捨て方が悪くなってしまう可能性が高くなります。
また、共用廊下などに私物を置くことに対して注意をせず放置すると、他の部屋も玄関ドア付近に私物を置いてしまいます。
長い間放置をされてしまうと入居者モラルは低下し、空室の増加や長期空室化に繋がりますので、都度適切な対応をとっていく必要があります。
入居者トラブルを避けるための対策
この章では、入居者トラブルを回避するためにしておくべき対策を6つご紹介します。
入居審査をしっかりと行う
入居審査時には管理会社にのみ任せっぱなしにせず、大家さんも申込者情報の確認なども行い入居者を詳しく審査することが大切です。
契約時に禁止事項などの内容を詳しく説明する
契約時に禁止事項の例示や違反した場合の対応措置(退去など)を詳しく説明をしておき、入居者の「この程度なら大丈夫だろう」ということのない様な対策をしておきましょう。
定期的に物件の状況確認や管理状態を確認しておく
最低でも月に1回以上は物件に行き、物件の破損状況(共用灯の不点灯や破損など)や管理状態(共用部分の清掃・ゴミの分別管理など)などをチェックしましょう。
管理委託契約書の内容を確認しておく
管理会社が何処まで対応してくれるのかは、全て契約書に書いてあります。契約内容をすべてチェックしておき、放置している場合には具体的に指摘をして改善を促しましょう。
賃貸管理会社との信頼関係を深める
日頃から管理会社の担当者と連絡を密にとり、細かいことでも報告や連絡をもらえる様な関係性の構築を大家さんの方からも積極的に働きかけていくと、お互いの信頼関係が高まります。
相談できる専門家を見つけておく
信頼できる弁護士などの専門家を探しておき、いつでも弁護士に相談できる体制を整えておくと安心です。
まとめ
この記事では、賃貸経営でよくあるトラブルと対処法について詳しく解説しました。
自主管理で迅速に対応するのは当然ですが、管理会社に委託をしている場合でも、最近疎かになっている箇所を指摘して具体的に注意すると、早期の改善が可能です。
賃貸は「経営」ですので、日頃から分析や改善をしっかりと行い、改善をはかっていくことが重要です。
イエジャーナルでは不動産の売却や購入のご相談を承ります。