売りっぱなしはダメ!不動産を売るときに注意したい契約不適合責任とは?

不動産の売却で物件を売ってからも売主に責任があることはご存じでしょうか?

今回は売ったら終わり、買ったら終わりにならない為に買主が売主に責任を追及できる契約不適合責任について詳しく解説していきます。

目次

契約不適合責任とは

契約不適合責任とは、2020年4月に民法改正で生まれた言葉です。それ以前は、瑕疵担保責任として呼ばれており、民法改正により内容も変更されました。契約不適合責任とは、民法第562で以下のように規定されています。


「売買の目的物が種類、品質や数量など契約の内容と適合しない場合、買主は売主に対して目的物の補修や代替物の引渡しまたは不足分の引渡しによる履行を請求することができる」
不動産売買契約における売主の担保責任は、民法改正(民法566条より抜粋)により以下のように規定されています。


「売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合(契約不適合の場合)において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない」


不動産取引の場合、買主が契約不適合を知ってから1年以内に売主に通知すれば、権利はなくなりませんし、買主が1年以内に通知すれば、知ってから1年が経過していても売主に請求が可能です。なお、契約不適合の時効は、民法166条で以下で以下のように規定されています。
「 債権者(買主)が権利を行使できることを知った時から5年間行使しないとき、または、権利を行使できる時から10年間行使しないときには、債権は時効によって消滅する」

不動産取引における契約不適合責任

不動産取引で、買主から売主に対して契約不適合責任を追及できる方法は以下です。

  ①履行の請求権
契約不適合の状態を補修や復旧するなどして、引渡しを行いように請求する権利
  ②代金減額請求
契約不適合の程度に応じて、売買代金から減額するよう請求する権利
  ③損害賠償請求
契約不適合によって生じた損害を売主に請求する権利
  ④契約解除
     契約不適合により、売買の目的を達成できたいため契約解除を請求する権利

注意したい契約不適合責任

不動産取引において、売主として注意すべき事項は以下があげられます。
 ■不動産の状態を明確にする
 ■免責とする内容を明確にする
 ■適切な保証期間を設定する
 ■買主に物件調査を実査させる

不動産の状態を明確にする

不動産取引で買主が契約の内容に適合しない目的物を引渡されたと判断した場合、契約不適合責任を追及される可能性があります。そのため、対象となる不動産については、詳しく状態を説明する必要があります。特に築年数が経過している不動産の場合、経年劣化があったり、何かしらの不具合があるものです。

売買契約後にトラブルにならないよう、売買契約書や重要事項説明書に取引する不動産の状態を明記する必要があります。虚偽記載は論外ですが、買主に対して物件をよく見せようとして、曖昧にしてしまうと危険です。不具合や劣化がある設備などについては、そのまま売却するのか、売主で補修して引渡するのか、事前にしっかり交渉しておきましょう。

免責とする内容を明確にする

民法改正により、不動産売買契約で売主の契約不適合責任を免責とする場合、細かく内容を規定する必要があります。民法改正前は、「売主の瑕疵担保責任は一切免責とする」と記載すれば問題になりませんでしたが、改正後は契約書に分かりやすく記載が求められます。


例えば、売却する不動産の地下埋設物や地中障害など、売主として調査しておらず、リスクが特定できない場合は、免責とする交渉が必要になります。

また、中古マンションを売却する場合、付帯設備表(売買対象となる不動産に付属する設備の状況を表したもので、具体的には給湯設備、キッチン、洗面設備、浴室設備、換気設備、空調設備、照明設備、インターフォン、食器棚、下駄箱、網戸、天戸、ふすま、障子、アンテナなどの故障や不具合を記載する)を添付しますが、故障や不具合は詳しく記載が必要です。引渡し後にトラブルが発生しないよう、現況のまま引渡すのか、どの部分を売主として補修するのか、何か交換するのかなど、具体的な対応が付帯設備表で把握できるようにしましょう。

適切な保証期間を設定する

契約不適合責任の保証期間(買主から売主に通知できる期間)は、原則として買主が不適合を知ってから1年以内です。この「知ってから1年以内」というのが非常にあいまいになる可能性があります。例えば、不動産売買契約で保証期間について明記しない場合、物件売却して5年以上経過した後でも、買主が契約不適合を知った時点から1年以内であれば、売主に損害請求や代金減額などの請求が可能です。

つまり、売主としていつまでも保証するリスクを負うことになってしまいます。民法上、買主が契約不適合責任の権利を行使できるのは、時効により10年と定められています。売主として、永久的に義務を負うわけではありませんが、期間が長いほどリスクが高まります。

極端に短く設定すると無効になるため、買主が納得できる通常の範囲内で期間設定する必要があります。旧法では、瑕疵担保責任の期間は3~6ヶ月とするケースが多かったので、それらの期間を目安に設定するとよいでしょう。

買主に物件調査させる

不動産を売買する時に、買主に建物調査(インスペクション)をさせることで、契約不適合責任のリスクを限定できます。建物調査は、建築士などの専門家を起用して、建物などの状況を細かくチェックするものです。建物調査はどちらが実施しても問題ありませんが、買主に実施させることで、売主として伝えるべき建物状況に内容に付加できます。


タイミングとしては、買付証明書を受領して契約するまでの間に実施するとよいでしょう。買主に調査させるとリスクが増大するという心配もありますが、買主に状況を納得して購入してもらうことで、将来の不確定な要素を減らせるでしょう。

まとめ

不動産売買契約には、法律の専門用語が多く、内容を正確に理解しないとトラブルが発生します。

特に、契約不適合責任は民法改正により、売買契約書の記載内容が重要となりました。売買契約書は通常、仲介会社が作成することが多いですが、リスクやトラブル防止のため、不動産に強い弁護士に契約書を作成して貰うことをお勧めします。

委託費用は掛かりますが、十分検討してみる価値はあるでしょう。

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この記事を書いた人

◾️不動産歴
約19年
◾️保有資格
宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、不動産証券化マスター、FP2級
◾️得意な不動産ジャンル
不動産投資、不動産売買、不動産開発
◾️自己紹介
大学卒業後、2004年に大手総合不動産会社入社。以降、一貫して不動産開発や不動産投資など、不動産マーケットの最前線で業務に取り組んでいます。

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