建売り住宅はなぜ安いのか?安い理由を解説!注文住宅にない強みとは?

戸建住宅は、大きく注文住宅と建売り住宅に分類できます。注文住宅とは、自分で購入または借りた土地に、依頼先の住宅会社と打合せをしながら間取りや外装、設備仕様など最初からデザインする住宅を言います。一方、建売り住宅とは、不動産業者が保有する土地に建物を予め計画して販売されるものを言います。

目次

建売り住宅の特徴

建売り住宅は、全国規模で事業展開する大手ハウスメーカーや大手デベロッパーから、個人経営に近い工務店や不動産会社まで幅広く取組んでいます。建売り住宅の特徴は、業者側は土地を単体で販売する活動や建物の契約前後で必要な顧客との打合せ時間を省くことでコストダウンでき、顧客側としては土地から探さなくても庭まで完成された状態で価格も明瞭なので分かりやすいという面があります。

また、建売り住宅の特徴として、分譲地内の外観デザインなどに統一感があり、分譲地内の道路や歩道などが整備されることがあるため、街並みとして一体感があります。最近では街にあった街路樹を整備したり、電線などを地中化するなど、街としての魅力を高める分譲地が増えています。また住宅地に侵入する車を制限する道路計画や警備員が定期的に巡回するサービスのある建売り住宅もあります。他にも、共通の設計や設備で多数の住宅を建築するため、建築費や設計費をおさえることができるのが特徴です。

国土交通省「建築着工統計調査報告」によると、建売り住宅(分譲住宅のうち、一戸建住宅を建売り住宅とした)は、令和4年で145,992戸が分譲されています。なお、マンションは108,198戸であり、建売り住宅のほうが多く分譲されている状況です。

<参考>国土交通省「令和4年の新設住宅着工戸数(概要)

注文住宅の特徴

注文住宅は、、大きくフルオーダー型とセミオーダー型があります。フルオーダー型は、使用する資材から外装、構造など家を建築するすべての項目を発注者が決定します。セミオーダー型は、基本的な仕様が決まっており、そこから発注者が選択する方式です。すべてを発注者が決めるフルオーダー型と比較して、セミオーダー型は間取りの選択、キッチンやお風呂などの仕様、外壁や屋根などの色などを一定の選択肢の中から決めていきます。

注文住宅の一番の特徴は、自由度が高いことがあります。注文住宅は自分のイメージの形に近づけるよう、間取りや外観、仕様を設計士に依頼することができます。依頼先の住宅会社によって制限もありますが、予算と法規制が許す限りで夢を実現できるといえます。その為、まったく同じ家ができることはなく、自分仕様でオンリーワンの住宅を建築できる特徴があります。また注文住宅は、建築の設計から完成まで自分自身でチェックできます。建売り住宅の場合、完成した状態で購入を検討するケースが多いため、建築中のプロセスや建築現場を確認することは難しいでしょう。

建売り住宅と注文住宅との比較

建売り住宅と注文住宅の特性を説明してきましたが、コスト、自由度、入居までの時間、将来性などについて、それぞれ比較してみます。

表:建売り住宅と注文住宅の比較

建売り住宅注文住宅
コスト・打合せを省略出来る為、割安
・分譲地ではスケールメリットも
積み上げ式で高くなる傾向
こだわりが多いと青天井で高くなる
自由度完成後の物件から選ぶのみ自分の思想の住宅を実現できる可能性がある
入居までの時間気に入った住宅があればすぐに入居できる土地探し、仕様決めに時間を要するため、引渡まで時間がかかる
建築中のプロセス分譲する会社にお任せ自分で確認できる
将来性万人受けする間取りが多く、売却しやすいオンリーワンの住宅で好みが大きく分かれる

それぞれのメリット/デメリットは相反関係になることが多いですが、簡単に解説していきます。まず一番気になるコストについてです。住宅金融支援機構が2023年8月に発表した「2022年度フラット35利用者調査」によると、建売り住宅、土地付き注文住宅の全国平均価格は以下の通りです。

 ・建売り住宅 3,719万円(前年比+114万円)

 ・土地付き注文住宅 4,694万円(前年比+239万円)

土地付注文住宅は10年連続、建売住宅は5年連続で前年度より価格が上昇しています。地方と首都圏で土地の価格差が大きいため、比較は難しいのですが、建売り住宅のほうが土地付き注文住宅より975万円安い状況です。

自由度については、当然注文住宅に分がありますが、コストとの見合いになります。

入居までの時間を比較すると、建売り住宅は自分の目で見て住宅を購入し、比較的すぐに入居できます。初めて住宅を購入する際、図面やパンフレットだけで完成系をイメージするのは難しいものです。ある程度、建築の知識や住宅に関する経験がある場合、注文住宅で理想の住まいを実現できますが、初めての方にはハードルが高いこともあります。一方、建売り住宅の場合、やや画一的な間取りや仕様と言われますが、各ハウスメーカーやデベロッパーが過去の分譲実績やユーザーの声など、蓄積されたノウハウが反映されています。

注文住宅の場合、建築現場の過程を自分で確認できますが、ある程度の知識がないと結局は請負者任せになってしまいますので、信頼できる会社の建売りであれば、施工管理からアフターフォローまで充実していますので、安心感が得られるでしょう。

また、売却などの将来性を考えた場合、建売り住宅は上記の通り、万人受けするような間取りや仕様になっているため売却しやすいことがあります。注文住宅で個性が強すぎる場合、購入検討者にとっては敬遠されやすい面にも注意が必要です。
<参考>2022年度フラット35利用者調査

建売り住宅の強み

注文住宅にない建売り住宅の強みは主に以下です。

  • コストが安い
  • 物件を見て購入でき、すぐに入居できる
  • 街並みに統一感がある
  • 万人受けする間取りで売却しやすい

昨今、地価や建築費の高騰などがあり、住宅価格は上昇しています。またコロナ渦を経て、リモートワークのニーズの高まりなどもあり、戸建て住宅のニーズは高まっています。また電気代などの水光熱費や食費などの生活に関わるコストも上昇しています。また住宅購入する層は、子供の教育費や両親の介護など、住宅取得後も相応のお金が発生します。

その中で、注文住宅より安く、気に入った立地や間取りであればすぐに購入できることは、建売住宅の大きな強みと言えます。賢く建築費を節約し、ゆとりあるライフプランを考えたい場合は、建売り住宅は検討する価値があると言えるでしょう。

記事の監修

髙屋 亮
1級ファイナンシャル・プランニング技能士 、CFP®、宅地建物取引士、証券外務員Ⅱ種、整理収納アドバイザー2級、住宅ローンアドバイザー
人生3大資金と言われる「教育・住宅・老後」に関わる実務経験を基盤に、1級FP技能士・CFP®認定を併せ持つ。無形商材で鍛えた表現力でひも解く金融セミナーは、その分かりやすさに高い定評があり、学校現場への金融出張授業も手掛ける。

メッセージ

「貯蓄から投資へ」のスローガンの下、NISAやiDeCoなどの制度も言葉は普及しつつありますが、 実際にはよく分からないという声も少なくありません。 私たちFPにできることは限られていますが、「見えない不安を見える課題に変える」は可能です。 霧がかかって先が見えない状態から、先の障害物が見えて舵を切れるような感覚です。 あなたの航路の羅針盤に、一緒にライフプランを考えてみませんか。

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この記事を書いた人

◾️不動産歴
約19年
◾️保有資格
宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、不動産証券化マスター、FP2級
◾️得意な不動産ジャンル
不動産投資、不動産売買、不動産開発
◾️自己紹介
大学卒業後、2004年に大手総合不動産会社入社。以降、一貫して不動産開発や不動産投資など、不動産マーケットの最前線で業務に取り組んでいます。

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